はじめましての方も、いつもご覧くださっている方もこんにちは!
リカちゃん専門美容室 akaribbon(アカリボン)です。
この記事では、お預かりした大切なお人形のメンテナンス記録を、写真とともにご紹介しています。
【本日のお客様】リエ姉さん

今回ご紹介するのは、なんとあの幻のお姉さん――リエ姉さんです♡
かつてスチュワーデス(今でいうCAさん)として世界を飛び回り、ある日偶然にも生き別れの母・織江さんと再会。しばらく共に暮らすも、またふらりと旅に出てしまうという…。
ロマンあふれる背景を持った “旅するお姉さん”。
そんなレアドール、リエ姉さん。
それでは綺麗にしていきます♡
before

ぎゃ~!
美品です。髪もツヤツヤでとても美しい♡(^^♪
お預かりしたリエ姉さん、第一印象は「綺麗!」その一言に尽きます。
お顔立ちはまさに“可憐”で、ついこちらがうっとりしてしまう程です。
こちらのリエ姉さん、ご依頼主様からは「ヘアセットと、足にちょっとした難あり」とのこと。
なるほど…足に難ありとな、、、
足から飛び出した針金

まずは左耳の下に注目!
ちゃんと彼女のトレードマーク――ほくろもありますね♡
このほくろが決め手となって、織江さんはリエ姉さんを「私の娘」と確信したんですよね。
さて足を観察すると、足元――特に踵のあたりから針金が露出しているのが確認できました。
リエ姉さんは“ニューリカちゃん”と同時期のお人形です。
そのため、足の内部には可動用の針金が内蔵されています。
今回のように針金が露出するのは、遊ばれすぎたことによる劣化…かと思いきや、実際にお預かりして観察するとどうやらこれは製造時のエラー品の可能性が高い…。
というのも、周囲に目立った破損の痕跡がなく、錆なども発生しておらず形状的にもややプラスチックの成型に不自然な凹みが見られます。
このようなケースでは、修理をする場合パーツを一度溶かしてからパテで再形成し直すことが可能ですが、どうしてもその過程で“傷つける工程”が発生してしまいます。
今回のリエ姉さんとても状態が良いです。そのため今回はご依頼主様と相談の上、リエ姉さんの「個性」として足のエラーはそのまま残す判断にしました。
古いお人形ではエラー品はよくあることですが、それも時代が生んだ味わいだと思います。
しかもこの針金、錆びてもおらず非常に良い保存状態なので、むしろ歴史的価値のある個体だと思います(^^)
背中に青い影

さらにボディチェックしていくと、背中に青みがかった影が。
ライトを当ててみると、内部に黒く影が見えました。
これは…おそらく腕の可動部分に使われていたゴムが、経年劣化で溶けて背中に貼り付いて出来たもの。
当時のタカラ製ドールでは、内部ジョイントに黒いゴムが使われていたことがあります。
この黒ゴム、実は時間が経つとタール化(=樹脂が分解・酸化し、粘着質の液体になる現象)してしまうのです。
後の時代にはオレンジの改良版ゴムが使われるようになり、こちらは比較的目立ちにくく改良されています(こちらも経年劣化でタール化します)
背中の洗浄と、黒ゴムの撤去作業


ボディを傷つけないよう、お湯で温めてから慎重に分解していきます。
この工程、温めず焦って力任せに引っ張るとパーツが割れてしまうので、かなり注意しながら作業をしています。
中を確認すると、やはり黒いゴムがべったり…触れるとギトギトしており、まさにスライムのようになっていました。
この現象が、素材が劣化してタール化している証拠です。
私はこのリカちゃんたちの「お風呂タイム」が大好きで、お人形たちを湯に浸している間にいろんな事を考えています。
この日は「(裁縫が苦手なので)自作ドール服は無理でも、靴なら木で削って作れるかも…まずは粘土でデザインからか…」なんて考えていました。
妄想が捗ります。
そうこうしているうちにボディが綺麗になりました。
比較すると元の汚れの酷さが分かります
洗浄が終わると、背中の色もかなり改善されます。
ゴムの交換

この状態まで劣化していたゴムは再利用不可なので、ご依頼主様に許可を取り透明のチューブに交換します。
オリジナルの黒ゴムではなくなりますが、径や硬さが限りなく近い透明の素材を厳選して使用することで、当時の可動感を損なわないよう仕上げています。
ヘアスタイルのリサーチ

実はakaribbonはショートヘアのヘアセットは依頼数が少ないです。
依頼の90%程が初代リカちゃん・ニューリカちゃん、時々その他のお人形…といったところです。
今回のリエ姉さんは初めてのセットするお人形。
しかもショートヘア。
意外とこの長さのセットは珍しく、ちょっと緊張します。
こういった場合は当時のスタイルを調べるところからスタートです。
どうやら初期スタイル(初代リカちゃんと写っているリーフレット)は前髪の左側を耳にかけた大人っぽい印象。
後期(ニューリカちゃんと写っているリーフレット)では両側にふんわりとしたウェーブが入った優しい雰囲気に仕上がっているようです。
今回のリエ姉さんは「ニューリカちゃん」と同時にお迎えされたという話でしたので、ご依頼主様のご希望で後期のスタイルに決定。
資料を元に再現していきます。
お湯パーマで毛流れを整える

ショートヘアのセット、最初は不安もありましたが…始めてしまえば楽しすぎる!
至福の時だ~♡
初代リカちゃんのボブセットのときにも感じましたが、短い髪は造形的な楽しさがあってちょっとした図工の時間みたいです。
まるで粘土をコネコネしてるみたいな感覚。 コネコネと流れを整え、お湯で形を固定。再現度高めのスタイルに仕上げていきました。
after

まるで空港の華…これが天使か。


仕上がったリエ姉さんは、もう…“キラッキラ”の一言。
これは罪、罪すぎます( ;∀;)
「どちらの便に乗られてますか?」と思わず声をかけたくなる美しさ。
そりゃあ織江ママも見間違えるはずがありません。母も美女、姉も美女、リカも美女…遺伝子は嘘をつきませんね。
セットしていて思いましたが、リエ姉さんの髪型左右でカールの向きが違いました。
右は内巻きのようでいて、外ハネに近いカール。
左は内巻き。
そして後ろは外ハネ。
…なんとも不思議なバランスですがしっかりマッチしています、昭和ドールでこのアシメ感…逆に新しい。
タカラさんの造形センス、やっぱり凄いなと思います。
最高にキレイにセットできました。
スリーブ

承知も承知だと思いますがドール用スリーブは、髪型を保護するだけではなく摩擦や色移りからお人形を守る大切な保護アイテムです。カミアイテム(^^♪
特にビニール製の古いドールは表面が傷みやすく、スリーブを被せることでダメージを防げます。
べたつきやホコリ、紫外線による劣化も軽減でき、もちろん髪の保護にも有効です。
静電気が起きにくい素材や、酸化防止加工されたものを選ぶとより安心です。
大切なドールを長く美しく保つために、スリーブの使用は欠かせません
before→afterまとめ


セット後のリエ姉さんは、まさに別人のようでした。もともと美しかったですがほんの少し整えるだけで、印象が見違えるのがお人形の不思議です。
リカちゃんの姉として一時期登場したものの、いつの間にかまた姿を消してしまった彼女。
そういえば、生き別れた理由って何だったんでしょうね…。
ピエールパパの存在がまだ詳しく明かされていなかった頃の話なので、謎がやたら多い(設定が曖昧とも言う)のもリエ姉さんの魅力のひとつかもしれません。
足にちょっぴりレアな個性を持ったリエ姉さん、今回はご来店ありがとうございました♡
ご覧いただきありがとうございました(^^)/♡
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