はじめましての方も、いつもご覧くださっている方もこんにちは。
リカちゃん専門美容室 akaribbon(アカリボン) です。
1967年に誕生した初代リカちゃん。
その中でもアップスタイルの子は少し特別な存在。
頭頂部で高く結い上げた華やかなヘアスタイルできゅっとまとめられたカール。
そして特徴的なくるりんおくれ毛…。
今回はアップスタイルの初代リカちゃんをお預かりし、リペアからスタイリングまでを丁寧に行いました。
髪型の特徴や経年による変化、内部構造のクリーニング、そして再現にこだわったおくれ毛の復元まで、実際の修復過程を写真とともにご紹介します。
初代リカちゃんの髪型についてまとめた記事もあります☟(^^♪
【本日のお客様】アップヘアの初代リカちゃん

本日のお客様は、アップスタイルの初代リカちゃんです♡
1960年代当時のスタイリッシュな空気をまとった、まさにハイカラなお嬢さんです。
この子はいつもの初代リカちゃんとは違い髪全体が高い位置でぎゅっとまとめられています。
頭頂部にはふんわりカールのお団子が乗っています。
毛量がしっかりあり、おくれ毛がくるりんとカールして……あれ?おくれ毛は綺麗にカールへ収納されてしまっているようです。
全体的には汚れが目立つ状態……。
では、綺麗にしていきましょう♡
Before♡ 状態確認と診断

舞妓さんのような、凛とした佇まいをしていてこれはこれでとても可愛いですね。
崩れたヘアスタイルからも漂う気品…初代リカちゃんからは骨董品の壺のような芸術の圧を感じます。
この段階で一番気になるのはカットされていないかどうか。
髪は生えてきませんからね…(T_T)
今回ご来店いただいたリカちゃん、メイクもとても綺麗に残っており、髪の毛のボリュームも問題なし。
アップスタイルのヘアセットは難しいですが、特に前髪を整える工程が好きで、ルンルンで取り組んでいます。
ヴィンテージドールの魅力は当時の空気感や手触りにもあります。
そのため、むやみに修復を加えるのではなく、必要な部分を見極めてメンテナンスを行うのが基本です。
「当時のカールはできるだけ残してほしい」「地肌の見えている部分だけ整えてほしい」といったご希望も是非伝えて下さい。
その子に似合った自然な仕上がりを目指して進めていきます。
虫が…!?いても大丈夫♡

ご依頼主様は、届いた瞬間から汚れが気になり、すぐに袋に入れて送ってくださいました。
見た目には確かにくすみやホコリが目立ちますが、この子が過ごしてきた50年以上の時間を思えば当然のこと。
手足には針金の凹凸や、ぶつけた跡のような色移りも見られました。
髪の状態をチェックしていると…白くて小さなものが。。。
どうやら虫がいた痕跡です(^o^)でも大丈夫。
メンテナンスを行う上で虫や汚れなんて気になりませんし、こういったことも日常茶飯事です。
むしろ、ばっちこいな気持ちで…これからどんどん綺麗になっていくと思うとワクワクが止まりません♡
長期保管品か?ツイストボディの内部洗浄

全体の汚れが強かったため、ボディを分解し洗浄を行いました。
初代リカちゃんのツイストボディは腹部とお尻のパーツが独立しています。
腰のジョイント部分でしっかり固定されているため外すことが出来ません。
腹部内・臀部内に分けて独立した空間が存在しているのでそれぞれを綺麗にしていきます。
紫外線による樹脂の劣化、針金の腐食など、長期保管品ならではの経年変化が見られました。
泥水に浸かって、自然乾燥するまで放置されていたのか…乾燥した泥のような汚れがビッシリ。
内部にどのように汚れが入り込んだのか…?
「どんな場所で、どんな時間を過ごしてきたんだろうか…」
…汚れを落としながらこの子の50年を考えます。
洗浄が終了したら、しっかり乾燥させて組み上げます。
前髪から仕上げていく

アップスタイルは前髪が短いので前髪の復元難易度はかなり高めです。
後ろ髪との境目をしっかりと見極めながら丁寧に分けて作業していきます。
この結び目の根元と前髪の接合部分の構造美がたまりません。
髪の流れを読み解き、ひとつひとつの癖を手で整えていく作業がまるで謎解きのようです。
カールがかかりやすいように一度髪の癖を取り除く作業を入れています。
これをしないと毛先までしっかりカールがかかりません。
噴水ヘアがイケイケですね。
このリカちゃん部屋でヘビメタとか聞いてそうです(偏見)
メインのお湯パーマ♡

アップスタイルのカールは内巻き仕上げが基本です。
スタンダードヘアの外巻きよりも上手く巻くのが物理的に少し難しいです。
初代リカちゃんの表情ってほんと人間味がありますよね。
モナリザの微笑みのようで(※モナリザの微笑とは、見る角度や光の加減によって表情が変化して見える表情の事で、モナリザはルネサンス期最大の名画のひとつです)見る度表情が違います。
上段の初代リカちゃんは美容室でリラックスしているようにも見えるし、下の段はセットされて「ドヤッ☆」っておすまし顔に見えます。
タカラの技術力の高さに毎日圧倒されています。
妥協できないくるりんおくれ毛


アップスタイルの初代リカちゃんの心臓部。
それがおくれ毛。
このおくれ毛は初代リカちゃんの個性であり、アイデンティティです。
いづみちゃんにはないこのディテール、絶対に私が妥協したくないパーツのひとつ。
ですが…お湯パーマでカールを再現するのは非常に難しい。
カールがうまくつかず納期も迫ってきて、、、
「もうこのままでも十分かも…」、とちらりと思ったりもしました。
でもカタログのリカちゃんがこんなに綺麗なおくれ毛なら、絶対この子のおくれ毛も可愛くカールできるはず…ご依頼主様に
「もう少し待って欲しいです」
と泣きの連絡を入れて自分の所持しているアップヘアの初代リカちゃんでおくれ毛のカールを巻く練習を繰り返しました。
結果納得のいくスタイルが出来上がり、今後のおくれ毛の施術方法も定まった気がしました。
次からも再現度の高い施術が出来そうです。
依頼主からも「理想のおくれ毛です」と言っていただくことができ、この喜んで頂ける瞬間が一番嬉しいですね。
After♡ 仕上がった姿


国宝かな?(゜o゜)
beforeと比べると別人のようです。
気品と可愛さを併せ持つ、まさに昭和の国宝級アイドルです(^o^)♡
オン眉のバランスも絶妙で、どの角度から見てもたまらないです。
おわりに


1960年代にこれほど完成された造形美を持つお人形が世に送り出されていたこと。
改めて、当時の日本の職人技術に驚かされます。(初代リカちゃんをメンテナンスする度に新鮮に驚いています笑)
私自身も毎回、新しい発見と学びがあり、施術を通して人として成長させてもらっているような気持ちです。
こういった試行錯誤の過程が大好きで、リカちゃん美容室をしながらリカちゃん研究室?も同時に営業・運営しています。
研究と技術を深めながら、大切なリカちゃんたちに寄り添っていけたらと思います。
アップヘアの初代リカちゃん、ご来店ありがとうございました!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました♡
リカちゃんのリペアやヘアセットのご相談は、どうぞお気軽にご連絡ください。
akaribbon 
